充は震える息を吐き、どうにか落ち着こうとした。

言いたいことも、聞きたいことも、山ほどあったけれど、それでも努めて冷静に、



「理由は?」


とだけ、問う。

また少し、エミは電話口で沈黙した後、



「私が別れたいと思ったから。それ以上の理由はないわ」

「そんなんで俺が納得すると思ってんのか?」


充は低く返す。



「つーか、あの日、ほんとは何があった? 何かあったから、お前、そんなこと言ってるんじゃねぇのか? なぁ、エミ。何か言えよ」


責めたくないのに勝手に言葉が出てくる。

それでも電話口の向こうの声のトーンは変わらない。



「別れましょう、私たち」


抑揚なく言ったエミ。



理由がまるでわからない。

でも、充は諦めの方が先に立った。


磨き過ぎた愛の刃を、エミに突き刺したくはなかったから。



「わかった」


そうとだけ言い、電話を切った。

すぐに携帯の画面が待ち受けに戻る。


充は冷えて冷たくなった手で煙草を咥え、火をつけた。




ほんとに終わったのか。

何だかまだ現実味がなくて、でも心に大きな穴が開いたような気分だった。


この3年は何だったのだろうかと考えたけれど、やっぱり答えなんて出てこなかった。