いつもみんなから「部屋でうだうだやってるだけのやつ」だと思われている充だが、別に常に寝ているわけではない。

平日はきちんと株価のレートをチェックしているし、損をせずに売り切るためにニュースを観ることも欠かしていない。


でも、だからって大儲けしたいとも思わない。


生活できるだけの金を稼げればいいのだ。

それ以上は、特に使うことがないので必要はない。



「充さんさぁ、何でそんなに向上心ねぇの? 俺があんたくらい賢かったら、色んなビジネスに手を出してるよ。それなのに、ほんともったいない。宝の持ち腐れ」


ずけずけと言うカイジ。


カイジには少しも年上を敬うという気持ちはないらしい。

いや、カイジだけじゃなく、翔やヨシキにしてもそうなのだけれど。



「俺のことはいい。それより今は、お前のことだ」

「俺が、何?」

「エミから聞いたけど。チロと別れたんだって?」


「あぁ」と言ったカイジは、「ブスな上に口の軽い女だな」と、エミに対して、殴ってやりたくなるように暴言をさらりと吐き、



「でもそれ、もう解決したし。つーか、俺ちひろと結婚するから」


さらに、さらりと爆弾発言をした。

これにはさすがの充も驚いた。



「マジで言ってんのか?」

「マジに決まってんだろ、おっさん」


言うに事欠いて俺をおっさん呼ばわりしやがって。

とは、今は言っている場合ではない。


喧嘩ばかりして、すぐに別れるだ何だと言い合っていたカイジとちひろが結婚だなんて、ちょっと現実味がなかったから。



「あのな、籍を入れるっつーことは、もう別れたいと思っても簡単には別れられねぇんだぞ? 今までのようにはいかねぇんだぞ?」

「わかってるし。つか、二度と別れねぇし」