何が何だかわからないとはいえ、真偽のほどを確かめなければ気が済まなかったカイジは、翔を無理やりトイレに引っ張り込んだ。



「いってぇなぁ、おい。てめぇ、何すんだよ。服伸びるだろ」


文句を言って暴れる翔。

しかし、それどころではないカイジは、



「さっきの話、どういうことだ?」

「うん?」

「『好きな女』がどうのとかってやつだよ」


翔は思い出したように「あぁ」と言って笑いながら、



「言葉通りだよ。他の女たちとも手切ったし」


あっけらかんとして言われた。

これにはさすがのカイジもよろめいた。



「待て、待て。何がどうなってそうなった? ちゃんと説明しろよ」


翔はめんどくさそうな顔をしながらも、



「前から顔は知ってて、何回か話したことあったんだけど。気付いたら好きになってた。だからもう、他の女はいらねぇじゃん?」


『いらねぇじゃん?』じゃねぇよ、馬鹿。


この4年間、お前の所業を見守りながら、俺がどんな気持ちでいたかわかってんのか。

それなのに、お前ときたら、いきなり『好きな女ができた』から『他の女たちとも手切った』だと?



「どこの誰だよ、その女。もう付き合ってんのか」


言いたいことを押し込め、詰め寄るカイジ。

翔はちょっと引き気味に、「何をムキになってんだよ」と言いながらも、



「高校生。まだ付き合ってはないけど」


と、端的に、まるで説明にすらなっていないことを言うだけ。

カイジは絶句した。