康介の所為で負った心の傷は、そう簡単には癒えない。

翔だって『男』なのだ。


康介とは違う、大丈夫だ、とは、言えるはずもなかった。



「俺が浮気して、酒飲んで暴れるとでも思う?」

「わかんないじゃん、そんなの」


翔は肩をすくめ、



「俺、マジな時はちゃんとするぜ? 信用できないのも無理ないかもだけど、嘘じゃねぇし」


それでも、アユは不信感を滲ませた目で翔を見た。



あんなことがあった女を、どうして好きだと言えるのだろう。

他にも女なんていっぱいいるくせに。


私なら絶対に、もうこんな女とは関わりたくないと思うのに。




怪訝に目をやるアユに、翔は、



「じゃあ、まぁ、いいや。お前、まずは俺のことを知れ。で、徐々に好きになれ」


何様だよ、あんた。

おまけに上から目線ってどうよ。


とはいえ、無事に家に帰るためには、今は従っておいた方が賢明だろうと思ったから。



「わかった。もうそれでいい。だから、降ろして」


朝帰りした日以来、さすがに親もちょっと厳しくなった。

進路が決まっている以上、問題になるような行動は控えろと怒られたのだ。


今まで放任だったくせにとは思うが、一応は言うことを聞いておかなければ、普通に友達と遊ぶことまでできなくなりそうだし。



「そろそろ帰らないと、私ほんとやばいから」


必死で言ったアユに、翔はまた肩をすくめて見せた。