「大事なことだから人に言わないんだよ」


充は呆れ返っていた。

が、反対隣で、翔は「俺知ってたよ」と言った。



「この前、チロに会って、病院帰りだって言ってたから『どっか悪ぃの?』って聞いたら、『順調だったよ』って言われて。何のことかと思ったら、子供できてるらしいじゃん? まぁ、秘密主義のカイジらしいっつーか、自分から言うまで待ってたけど」


あっけらかんとして言う翔。

充はさらに呆れたように「お前なぁ」とこめかみを押さえるが、



「カイジが秘密にするってことは、それが誰かのためだからだよ。どうせ、俺やヨシキに気を遣ったんだろ?」


カイジは驚いたように目を丸くしていた。

翔は改めてヨシキの顔を見て、



「俺は祝うよ。お前はどうだ? ヨシキ」

「……俺、は……」

「子供だぜ? 新しい命が誕生するんだぜ? それってすげぇことだろ? 俺らが悲しくなる理由なんか何もねぇよ」

「………」

「真理は確かに死んだ。自分で命を絶った。でも、それとこれは別だろ。だから祝ってやれない、なんて理屈はありえねぇもん」


親友の子供。

可愛くないわけがない。


ヨシキはまだ見ぬぬくもりに思いを馳せた。



「そうだね。楽しみだね」


ヨシキは涙を拭った。

翔はひどく優しい顔になり、



「ヨシキの命も、俺らの命も、カイジの子供の命も、みんな平等なんだよ。望まれてるし、だからどんなに苦しくても生きてなきゃいけねぇの」


あの頃と同じ。

翔の強さがひどく眩しい。



「俺の所為で真理は死んだのに、翔はやっぱり怒ってくれないんだね」