「自分が死んでも誰も泣かねぇと思ってんのか? てめぇは誰より残される側の気持ちがわかってんじゃねぇのかよ! なのに、俺らをまた苦しませる気かよ!」

「でも俺はもう真理のところに行きたいんだよ」

「甘ったれてんじゃねぇ! 人間、どうせいつかは死ぬんだよ! 誰だってそのうちあの世へは行けるんだ! だったらそれまで、精一杯、胸張って生きてから死ねよ! それすらしてねぇくせに、簡単に逃げんな!」


翔の言葉が痛かった。

痛くて痛くて、たまらなかった。



「翔。わかったから、その手を離せ」


カイジは、今度は冷静に、たしなめるように言った。

翔は舌打ち混じりに、ヨシキの胸ぐらを掴んでいた手を離した。


息を吐いたカイジは、



「俺もそれなりに責任を感じてる」


しゃがんで、ヨシキと同じ目線の高さで言った。



「あの頃、俺だけがお前と真理ちゃんのことを知ってた。知ってたし、止めようとも思わなかった。結果がアレだ」

「………」

「罪悪感もあったんだよ。だから今までずっと、お前のことを甘やかしてた。でも、こんなことになって、それすら間違いだったみたいだけどな」


カイジは、泣きじゃくるヨシキの頭をなでた。

親が子供にするみたいな顔で、



「お前に死なれたら、俺とちひろは結婚式なんてやってる場合じゃなくなるし、俺は友人の席にお前の遺影を置きたくもない」

「え?」

「子供できたから結婚すんの、俺ら。つーか、もう籍は入ってんだけど」


子供?

結婚?


驚き過ぎて、声も出せなかった。



しかし、「は?」と言ったのは、横にいた充だった。



「聞いてねぇぞ、おい。いつの間に籍入れたんだよ」

「先月」

「言えよ、そういう大事なことは」