「色々あって、家出てエミと暮らすことにした。でも、ババアが怒ってて。そんで話し合った結果、俺が親父の会社に入るなら、って」

「………」

「別に今も親父の会社を継ぎたいとは思わねぇし、親父もどっちでもいいって言ってんだけど。でもさ、考えてみたら、やってみなきゃわかんねぇこともあるかなぁ、って思ったし。だからって、嫌だと思ったら辞めるけど」

「………」

「まぁ、株やってるよりは安定してるし、エミのためにもそっちの方がいいかなぁ、みたいな?」


ヨシキは目を伏せた。



「充さん、エミちゃんと結婚するの?」

「わかんねぇけど、多分、そのうちする」


曖昧な言い方だが、充ははっきりと言った。




翔のカノジョを奪った形の充。


もう翔に対しての罪悪感はないの?

と、ヨシキは聞きたかったが、それでもどうにか言葉を飲み込んだ。



自分に重ねるべきではない。



「そっか。いいね。羨ましい」


口元に笑みを浮かべて返した。


真理と結婚できると信じて疑わなかった過去の自分。

しかし、今ではもう、それすら夢でしかない。



「何だか、みんな、どんどん変わっていくね。この街もだけど。当然だけど、もうあの頃とは違うってことなんだよね」


珍しく、カイジは何も言わなかった。

代わりに、充が、



「お前、今日どうすんだ? こっちで泊まるのか?」

「そうしたいけど、明日の朝一番に撮影が入ってるから、適当に戻るよ。それにどうせ、いつまでこっちにいても翔は会ってくれないし」


とはいえ、翔に会いたいのかどうなのかは、もうよくわからないのだけれど。