「好きでこんな風に生まれたわけじゃない」


ヨシキは愚痴をこぼすように、不貞腐れて言った。



「肌は白いし、目は茶色くてぐりぐりしてるし、体なんて棒みたいだ。真理だって気持ち悪いと思うだろ?」


同意してほしかったのに。

なのに、真理は顔にチョコをつけてきょとんとし、



「え? 何で? 私、よっちゃんのこと好きだよ。優しいから、お兄ちゃんよりも大好きだもん」


翔は過保護なあまり、とにかく真理に対して口うるさかった。

真理の中にはそういうのの煩わしさもあったのかもしれないが、無邪気に好きだと言われ、しかも見た目云々ではなく自分の内面で判断してくれている。


おまけに翔よりもと言われ、ただ嬉しくなったヨシキは、それをこの上なく思ったのだ。



「俺も真理のこと大好きだよ。ちっちゃくて、可愛くて。真理以外の女の子は怖くて嫌だ」


早熟な女の子たちは、本当に苦手だった。

それと比べて、真理は小動物のように愛らしい。


いつからそれが恋心になったのかは定かではないが、きっと、きっかけはそれだったように思う。




愛情があるから、真理に対して厳しい翔。

しかし、ヨシキは愛情があるからこそ、とにかく真理を甘やかした。


真理も真理で、だからよりいっそう、そんなヨシキになついていった。





やがて、ヨシキと翔は中学生になった。



思春期だ。

女の子が苦手だという思いに反し、体はそれを求め、頭では常にそのことを考えるようになった。


まだ小学生の真理を欲している自分の醜い欲望に気付いたのだ。