真理が眠る場所には、今年もたくさんの花やお菓子やぬいぐるみが手向けられていた。



5年前の今日。

ヨシキの最愛の恋人は自ら命を絶った。


どうしてそうなる前に気付いてあげられなかったのかとか、何で俺を置いていくんだよとか、そんなことをぐるぐると考えながら過ごしてきた、この5年。


年齢だけを重ねても、ヨシキの心はあの頃に取り残されたままで。

今も夢の中の彼女とだけ、笑い合う。






ヨシキの母は、ヨシキを愛さなかった。

誰の男の子供かもわからない上に、堕ろす金がなくて仕方なく生んだだけらしく、おまけに風俗店で働いているのに体型が崩れて売上が減ったと、母は酒を飲んではよく嘆いていた。


だからヨシキへの愛情がないのだって当たり前だったのかもしれない。


そんな中で、引っ越した先の近所に住んでいたのが、翔だった。

翔とは、共に母子家庭で、きっとお互いにそういうシンパシーを感じて仲よくなったのだろうし、ひとりの時間が多かったから、ヨシキは自然と翔の家に入り浸るようになっていった。



強くて、自由で、優しい翔。

ヨシキはそんな翔に憧れの念さえ抱いていた。


翔は大空を翔けるという名にふさわしいと、今でもヨシキは思っている。




翔の妹だった真理は、出会った当初はまだ3歳だった。




だが、あの頃のヨシキは、自分にも妹ができたような気分だった。

翔は真理を守るナイトのような兄で、とにかく目の中に入れても痛くないほど妹を可愛がっていため、ヨシキも真理を大切にするのが当然だと思っていた。


親友ができて、妹もできて、おまけに翔の母にも優しくしてもらえて。


それは、ヨシキの人生で初めての喜びだった。

たとえ、母に愛されていなくても、翔の家族の一員になれたみたいだったから。