疲れたのか、エミはそのまま眠ってしまった。

充はそんなエミの寝顔を見ながら、これからのことを思案した。




眠れないまま、深夜1時を過ぎた頃。



突然、充の携帯が鳴った。

ディスプレイには【親父】と表示されていて、驚いた充は二度見してしまった。


父から電話が掛かってきたのなど、未だかつて初めてだ。


嫌な予感の方が大きかった。

それでも、どうしてだか無視することもできず、恐る恐る通話ボタンを押した。



「母さんから聞いたよ。家を出たそうだな」


単刀直入な父。

だからって、怒っているという風でもない。



「母さん、魂が抜けたみたいな顔をしているぞ。家に帰ってきて晩飯が用意されていなかったのは、初めてだったよ」


母は、父が家に帰らない日でも、絶対に父のための食事の用意は欠かさなかった。

だから、それも手に着かないほどの落ち込みようなのだろうとは、想像に易い。


しかし、そんなことは覚悟の上だ。



「俺は帰らねぇぞ」


決意を持って低く吐き捨てる充。

父はなぜか「ははは」と笑い、



「別にお前がそうしたいなら、父さんは止めない。もういい大人なんだから、自分の人生くらい自分で決めればいいさ」


捨てたつもりが、捨てられたのだろうか。


やっぱり俺はあんたにとって、その程度の存在でしかないのかよ。

唇を噛み締めた充に、電話口の向こうの父は、