禁断の部屋


 ああ、なんてことかしら。わたしとは何の関係もない赤の他人のリュシアンが、わたしを支えてくれていただなんて……。


 どうしましょう。視界が歪んで、涙が止まらない。目からあふれた涙が、絶えず頬を流れているわ。




「ただいま」

 低いその声の主はもう知っている。


 リュシアン。


 もう、彼はなんていうタイミングで帰ってくるのかしら!!


 霞んだ視界のまま、駆け足で玄関ホールへと向かった。


「おかえりなさい、リュシアン。それで? 貴方はわたしに何か言いたいことがあるのではなくて?」


 何故わたしの絵を買っていると言ってくれなかったの?

 そうすれば、わたしは素直に貴方という存在を認めたし、わたしはここに来てからも怯えて過ごすこともなかったし、天涯孤独な人間だと自分を哀れに思うこともなかった。