今夜の夕食は、シチュー

鈴木さんが好きそうだったから

俺が一生懸命に具材を切っていると

鈴木さんがよろよろとキッチンに来る

「ごめん…まだ、出来ないから」

そう言うと

「し…ちゅー?」

「バレた?」

「おかぁ…さんの…シチューがいい」

「え?俺のじゃダメ?」

「おかぁさん……どこ?」

「湊さん!!鈴音さんに電話して貰えますか?」


俺は、1つひらめいた


鈴音さんにシチューを作って貰おう

ってのは、当たり前で


鈴木さんが、好きなのは

ただのシチューじゃない

母親の作ったシチュー



鈴音さんが来ると


鈴木さんは、ニコニコする

「おかぁ…さん」

鈴木さんがそう言うと、鈴音さんが涙ぐむ

「久しぶりね…そう、呼んで貰えるの」

湊さんも吉岡さんも春陽君もキョトン


「鈴音さん、もしかしたら
親権を湊さんに渡した後
定期的に鈴木さんと会っていたんじゃないですか?
会うたびにシチューを作ってあげたんじゃないですか?」

「そうよ…シチューが好きって言ってたから
毎月、作ったわ」


「それって、Souになるまでですよね」

「田中君、どうしてわかるの?」

「俺は、覚えてなかったですけど
俺の高校の文化祭で、鈴木さんが俺と出会ったって、聞いて
あの文化祭に、鈴音さんきてましたよね?
コレ、見覚えありませんか?」


鈴木さんから預かった名刺入れを

鈴音さんに見せるとすぐに


「コレ!!私の名刺入れよ!!」


「やっぱり……
鈴木さん、思い出したよ
俺が、君をSouにしたんだね」

にっこり笑う

「た……なか……さん…」

「なに?」

「好き」

「ふっ 俺も」


涙が止まらなかった

鈴木さんは、全然泣かないけど

俺はひとりで、2人分泣いた




鈴木さんが身につけたヘンなクセ


あれは、クラスの演劇発表

俺の役の真似だ


「飛べる!高く!!飛べる!!
そして、生まれ変わろう!!」


って台詞

舞台が終わってすぐに、一人の女の子が

2階から……飛んだ!?


「イッタァーーイ!!」


すぐに起き上がったから、大丈夫ってか

丈夫な子だなって

あれ、鈴木さんだったんだね