*鈴木 奏*


入院中、何度か来た大畠夫妻

「湊には、気をつけて
吉岡君と湊は、貴方にモデルを辞めさせ
閉じ込めてたのよ
貴方の記憶がないのは、あの2人のせいよ」

そんなことを言って

湊さんから、抱きしめられてる

週刊誌を見せられた

「この記事が出たときも、貴方が娘だとは
公表しなかった
意味、わかるわよね?」


あたしは、邪魔だった


そんなこと、わかってる


だから、捨てたんでしょ


「僕達には、子供がいないんだ
うちに養子にこないかい?」

「モデルも続けさせてあげる」


目の前に置かれた契約書

訳がわからなくて、サインはしなかった





湊さんのことは知らない、だけど玲音くんが私を外に出さないのは、モデルをさせたくないから?

ベランダに出ることもダメ


時々、外食したけど

私にわからない話題とか

見覚えのない店員さんから

声を掛けられたり



怖かった


あたしは、皆といればいるほど

ひとりになった


玲音くんの部屋でひとりでいるときより

ずっと、さみしかったよ




守るって… 何から?












今日は、春陽の仕事についていく!

凄く、嬉しい!!


「奏!!春陽から離れるなよ!!」

「わかってるよ!」












今日は、ファッション雑誌の表紙撮影


春陽、凄く格好いい!!


「少しいいかしら?」


春陽の撮影中

鈴音さんだっけ?大畠さんの奥さんが

声を掛けてきた


「何でしょう?」

「こっちで話しましょう」


春陽から離れるなって、玲音くんが

言ってたのに

私は、あっさり鈴音さんについていく


知りたかった



「どうして私を養子にしたいんですか?」


ずっと家族が欲しかった

私を娘にしたいと言ってくれて

正直、嬉しかった


「貴方を産んだのは、私よ!奏!!」


目の前に置かれた母子手帳には、確かに

〝鈴木 奏〟

「私の本名は、鈴木 奏子
ずっと、探していたのよ!?
湊が貴方を隠してしまうから」


この人が、私のお母さん?


「湊から、貴方を取り戻したいの!
貴方の意思で、こちらに来て欲しいの」


母子手帳を目の当たりにしても

この人を母だと、思えなかった


「どうして私を捨てたの?」


湊さんにした質問を鈴音さんにもした


「あの時は、貴方を育てられなかったのよ」


湊さんは、すまないと謝罪した

鈴音さんは、悪びれもせず

言い訳をした


どちらが、誠実なのか私にだってわかる


「ごめんなさい
私、鈴音さんの娘にはなれません
モデルは、したいけど
鈴音さんの事務所じゃなくてもいい」


私がそう言い終わると、ギリギリと奥歯を噛み締める


電話を取り出して


「連れて来て!!」