ーーパシャ。
今夜は満月で、綺麗な星空だった。
病室から出れない私は、病室の窓から写真を撮るしかなかった。
病院の夜は暗くて寂しい。
怖いと思うときもある。
けれど、星空を撮っていると心が落ち着いて嫌なことをすべて忘れられる。
星は、残酷なほど儚く美しかった。
「星華ちゃん?」
声の主は小夜ちゃんだった。
いきなりの声に私は、心臓が飛び出そうなほど驚いた。
「小夜ちゃん。今日は夜勤?」
「そうよ。まだ起きてたの?」
「うん。星が綺麗だなって」
死んだら星になるってよく言う。
星の数は亡くなった人の数だと。
そんなの高校生にもなった私が信じてるなんて、子供っぽいかな。
でも星になるのならいいかなと少し思うこともある。
「今日は満月なのね。綺麗」
月の光に照らされた小夜ちゃんは、美しく妖艶だった。
私はその姿に見惚れてしまった。
「私もさ、小夜ちゃんみたいに綺麗になりたいな」
「なに、急にどうしたの」
小夜ちゃんはクスッと笑った。
その笑顔に、何人の男の人が惹かれたのだろう。
「小夜ちゃんみたいに綺麗なら、先生も振り向いてくれるんだろうな」
昨日の夜、先生はキスをしてくれなかった。
なにもせずそっと離れ、先生は病室を出ていった。
置いてきぼりにされた私は、何が起こったのか整理するのに時間がかかった。
あれから先生とは気まずくなった。
今日は先生は病室に来てくれなかった。
私はどうすればいいのだろう。
「星華ちゃん、言いにくいのだけれど」
少し間を置いて、小夜ちゃんは切り出した。
「ん?」
「私と望月先生ね、婚約してるの」
え?
「こん…やく……?」
「望月先生のお父さん…つまりこの病院の院長が決めた許嫁なの」
頭が真っ白になった。
先生は一言もそんなことを言ってくれなかった。
許嫁がいるにも関わらず、先生は"付き合おう"と言ったの?
相手がいるから、キスをしてくれなかったんだね。
「一応病院の人たちには内緒にしてるから、星華ちゃんも秘密にしてね」
私を照らしてくれた先生という一筋の光が途絶えて、暗闇の中に放り出された気がした。



