「とりあえずは大丈夫でしょう」
先生は、天野の病室の前で待っていた俺にそう言った。
「…そうですか」
俺はそれ以上の言葉を発せなかった。
俺の頭の中は、天野が苦しんでいるのに何もできなかった後悔と、この先生に対しての嫉妬でいっぱいだった。
「そういえば、あなたは天野さんの…?」
「俺は天野と同級生の雨宮彗です」
「そうでしたか。今日はお見舞いですか?」
先生の言葉に、いちいちイライラした。
長身で、医者で、誰が見てもインテリ系のイケメンだと思うだろう。
俺はこの人に、何もかも負けていた。
それが腹ただしかった。
「先生さっき廊下で看護師さんと話してましたよね」
唐突な話題に、先生は一瞬驚いたような顔をした。
「聞いていたんですか」
「あの看護師さん元カノなんですか」
先生は黙りこんだ。
答えられないのか。
「もう終わったことです」
先生は静かにそう答えた。
「先生は天野の担当医なんですよね」
「はい」
「それだけですか?」
俺は椅子に座ったまま先生の方を向かず、攻撃的な口調で問いかけた。
「それは…どういう意味ですか」
「本当に担当医ってだけなんですか」
俺は確かに聞いた。
天野に駆け寄ったとき、先生は天野を呼び捨てした。
何かないわけがない。



