そして星は流れて消えた




天野が、もうすぐ死ぬ?


俺は病院の裏庭のベンチに座り、頭を抱える。

衝撃が大きすぎて、俺の中で整理がつかない。


嘘だよな?
そんなわけがない。

認められるわけがなかった。

だって、俺は……



「彗」

聞き慣れた声に呼ばれ、俺は驚いてしまった。

俺が座っているベンチから少し離れたところに、スリッパのままの天野が立っていた。

「天野…」

天野はなにも言わず俺の左側に腰をかけ、うつ向いた。

俺たちの間には、別れ話をしているカップルのような不穏な空気が流れた。



「彗、私ね脳に腫瘍があるの」


天野は突然、その話題を切り出した。

俺は、黙ったまま何も言えなかった。


「2月にさ、1年もつかわからないって言われたの。だからね、あと半年生きられるかどうかかな」


俺は、その言葉に何と返したら良かったんだろう。

本人から聞いてしまったら、俺は天野が死ぬという事実を認めざるを得ないじゃないか。

「腫瘍がある場所が悪くて、手術をすることができない。抗がん剤治療をすると、吐き気に襲われて苦しい日々が続く。それなら私は、どちらも選ばないことにしたの」


俺は天野が帰ってくるのをずっと待っていた。
そして天野から連絡がくるのを、ずっと待っていた。

入院する前、俺たちはよく連絡をとりあっていた。
でも天野が入院してから、ぱったりと連絡が来なくなった。

俺から連絡したって良かったはずだった。
でも、できなかった。

この半年間で、天野の中の俺はそんなに大きくなかったんだと思い知らされたからだ。