「遅かったね、彗。自販機の場所わからなかった?」
10分ほど経って、彗は飲み物を抱えて帰ってきた。
そんなにわかりにくい場所にはなかったはずなんだけどな。
「いや…」
「お母さんね、事務所でトラブルがあったらしくて先帰っちゃった。フルーツたくさん切ってくれたから食べよう」
ん…?
彗の様子がなにか変なことは、すぐにわかった。
顔が暗く、えらく気分が悪そうだった。
「どうしたの、彗」
「…」
彗はなにも話さない。
部屋に沈黙が流れた。
「…俺、用事思い出したから帰るわ」
そう言って彗は鞄を手に取り、病室を出ていってしまった。
「え?ちょっと彗!」
どうしたんだろう。
彗のあんな暗い顔初めて見た。
放っておくわけにはいかなかった。
追いかけなきゃ。
私は病院用のスリッパを履き、病室を出ようとすると誰かにぶつかった。
「どうしたんだ、慌てて」
ぶつかった相手は先生だった。
「いま高校生の男の子とすれ違わなかった!?」
「ああ、いまそこの廊下ですれちがったけど…」
「ありがとう!」
私は病室を出て左の方面へ走ろうとすると、先生に右腕を捕まれた。
「おいちょっと待て!走ったら身体に負担が…」
「でも…追いかけなきゃ…!」
私は先生の腕を振り払い、彗の背中を追いかけた。



