「星華ちゃん、採血するわよー…ってあら、望月先生」


自分の世界に入りすぎて、小夜ちゃんのノックの音が聞こえていなかったようだ。



「美空…」






「また星華ちゃんの病室にいたんですか。看護師の山田さんが先生のこと探してましたよ」



「…わかりました。では天野さん、僕は失礼します」


あ。

仕事モードだ。



ドアを閉めるときに、キラリと光るシルバーのネクタイピン。



行っちゃうのかと思うと寂しいけれど、ネクタイピンをつけてくれているのを見ると、寂しさも吹き飛んで照れる。







「…。星華ちゃんと望月先生って、最近特に仲良くなったわよね」



「えっ!?そうかな?」













「ええ……妬いちゃうわ」






「え?」



いま、小夜ちゃん何て言った?


聞き間違い?







私がぽかんとしていると、小夜ちゃんはにっこり微笑んだ。



「望月先生に星華ちゃんをとられるなんて嫌だもの。星華ちゃんの一番の話し相手は私だと思ってたのにな~」





ああ、何だそういう意味か!


「小夜ちゃんは私のお姉さんみたいな感じだもん!一番話しやすいに決まってるじゃん」


「ほんとに?ありがとう嬉しいわ」


"妬いちゃう"って、てっきり小夜ちゃんは望月先生のことが好きなのかと思った。



その瞬間ちくりと心に針を刺されたような感じがした。


違うとわかると私は安堵し、笑顔で小夜ちゃんと会話をした。