私は、アナタ…になりたいです…。

会ってみると、思ってたよりも良い人だった。
正確にはその様に見せていただけで、男性と付き合ったことの無い私には、彼が良い人に見えてしまっていただけだった。


好きな物を買ってくれたり、行きたい場所に連れて行ってくれる。
その裏にどんな思いがあるかなんて、考えもしないで付き合った。


数回会った後、初めてのキスを彼とした。
手慣れた感じのキスの仕方に、違和感を覚える程の経験は私にはなかった。


溺れる様に彼の虜になった。

初めて…と名前がつくものを全て、その人に捧げていた……。



遊ばれていただけだった…と知ったのは、彼の大学まで足を運んだ時ーーー


講義がまだ終わらないとメールしてきた彼をキャンパス内のベンチで待っていた。

『大学内にいます…』とメールを打ち始めて彼の声に気づいた。

あれ…と思って振り返った。

彼の隣には、目の覚める様な綺麗な女性が並んでいる。

女性の腕は彼の腕に通され、2人は指を絡め合うようにして掌を握り合っていた。



「イイよね。美男美女で…」


遠巻きに見つめていた女子達の声が耳に入った。


「話題のカップルだもんね。あの2人…」


付き合い長いんでしょ…と囁き合う人達の声を、信じられない気持ちで聞いていた。

私と付き合い始めた頃には既に彼女とも付き合っていたんだ…と知った。



(うそ…)


確かめたくて彼と彼女の前に立ち塞がった。

一瞬、驚いた様に私を見た彼は、何も声もかけず目も合わさずに逃げてしまった。