私は、アナタ…になりたいです…。

田所さんから電話があったのは、部屋のドアを閉めた時だった。


「今夜はご馳走様でした…」


上着のジャケットを脱ぎながらお礼を言う。
電話口の向こうからは車のクラクションが微かに聞こえていた。

田所さんはまだ外にいるんだな…と、すぐに思った。
酔い冷ましに歩いているところ…と、彼も説明してくれた。


「河佐さんと別れた後、もう一度『かごめ』で飲み直してたんです。今はその帰り」


田所さんの声は明るかった。
ぽっかり…とおとぎ話に出てくる様な店の雰囲気と細い路地を思い出した。


「大将と女将さんが是非また来て欲しい…と言ってました。僕しょっちゅうあそこへ出入りしてるもんだから、息子みたいに可愛がられてるんです…」


温かそうな人柄の2人に、私もまた会いたい…と思っていた。


「あの店なら私もまた是非行きたいです。今度こそ奢らせて下さい。田所さんにばかり払わせると沢山食べれないから…」


フェアな関係でいたかった。傷つかないでいい方法だ…と、自分なりに考えた結果だった。


「僕が払った方が安くしてもらえるんですよ。言ったでしょ?息子みたいに可愛いがられてる…って」


割引が効くんです…と、嘘か冗談みたいなことを言う。


「で、でも…!」


納得できない私に弱り、田所さんは一つだけ提案してきた。


「じゃあ今度お昼を奢って下さい。1階のパンでいいから。またあの公園で一緒に食べよう。この間はゆっくりできなかったけど、次はもう少し時間を持てるようにします」