私は、アナタ…になりたいです…。

深い仲じゃないわよね…と、大人らしい見解を示す。
飲み屋ならではの女将さんの眼力に、はは…と小さく笑った。


「そこは内緒ですよ。でも、少なくとも河佐さんは、僕の周りに集まる女子達とは違う気がする。彼女といると安心するんです。母に似ているという点以外に、あの人には周りを癒す力があるように思う。だから僕は彼女のことをもっと知りたいと思って、それで今お付き合いをしてるんです…」


「ふぅん…」


グラスの中を空にして、女将さんはトン…とカウンターの上に置いた。
それから唇の端をすこしだけ持ち上げて、自慢の右えくぼを作った。


「今夜の悠ちゃんはいつも以上カッコよく見えるわね。人は恋をすると輝きを増すのね〜」


私ももう一度恋したいわ〜と、冗談を言いながら立ち上がった。
ふざけた事ばかり言ってないで仕事しろ!…と、大将に怒鳴られたからだ。


『恋をすると…』と言われ、一瞬ドキリとした。
そんな感覚はまるでなかったのに、言われてみて初めてそうかもしれない…と思った。


河佐咲知には憧れてただけじゃなかったのかもしれない。
自分の気持ちは、憧れ以上のものに既になっていたのかもしれない。



(いつからだ…?)


思い返すにしても、触れ合ったのはまだ数回。
そして思い当たるとしたら、やはり初めて食事をしたあの夜だ。