私は、アナタ…になりたいです…。

「あの子…悠ちゃんの亡くなったお母さんに雰囲気が似てたわね」


ビールを口に運びながら、女将さんが鋭い一言を呟いた。
こっちはぐうの音も出せず、「そうですね…」と素直に認めた。


「もしかして…とは思うけど、だからお付き合いしてるとかじゃないわよね?」


疑うような眼差しを向けられ、「まさか…」と言い返した。


「間違ってもそんなことしないですよ。河佐さんに興味を持ったのはそこだとしても、そんな理由で付き合ったりしません!」


それじゃー僕がマザコンみたいじゃないですかと呟くと、女将さんは「十分マザコンよ」と笑って言った。


「胸にお母さんの写真を忍ばせてる息子なんていないでしょ?…まあ、私はそんな優しい悠ちゃんのファンだけど…」


おどけて見せるウインクは嫌味がなくていい感じがする。
僕がウインクするのが癖になったのも、一つはこれを真似しだしたせいだ。


「僕も、女将さんのファンですよ」


軽々しい言葉を口にしても、彼女はサービストークだと受け止めてくれる。
それを会社の女子にもするものだから、いつまで経っても取り巻き達が離れてくれない。


「本気で彼女のことを好きなの?」


遠慮もなく聞いてくる女将さんの顔を眺めた。
そんな僕に探るような視線を差し向け、もう一言付け加えた。


「まだまだ、これから好きになる感じ?」