私は、アナタ…になりたいです…。

「何処に座る?」


女将さんは丸盆にお冷とおしぼりを乗せながら聞いた。


「いつものとこで」


田所さんがそう言うと、嬉々としてカウンターの奥へと案内する。


「一番と二番入りまーす!」


元気のいい声を出して、私達を手招いた。


「…行こう」


田所さんは戸惑う私の視線に微笑んで、店の奥へと向かう。
待ち合わせの場所からずっと握られていた左手は、カウンターの椅子へ座る前になってようやく離してもらえた。


三角巾を被った女将さんは、私達が座るのを待ってからお冷とおしぼりを置いた。
それから田所さんに向かって、「何を飲む?」と聞いた。


「熱燗つけて下さい」


そう言った田所さんは、「飲めるよね?」と私を振り返った。
こくん…と頷くと、女将さんは威勢よく声を発した。


「熱燗一丁!」


まるでラーメン屋のような言い方をして去る。

カウンターの一番隅に座っている私の視点からは、調理場にいる店主と玄関の戸口が半分、それから背の高い田所さんの背中と肩から腕にかけてのラインが見えているだけ。




「悠ちゃん、そろそろ紹介してくれてもいいんじゃないのか?」


つきだしを冷蔵庫から取り出しながら店主が嬉しそうに笑った。
白髪が入り混じった顔ツヤのいい店主は、優しそうな眼差しで彼を見ていた。