私は、アナタ…になりたいです…。

足元に置いたバッグの中身が気になって仕方なかった。
帰り着いたら連絡して欲しい…と言ってきた人の顔が思い浮かんだ。
社交辞令だと思いながら、バッグの中からスマホを取り出す。

手にしたまま、ベッドへと足を運んで座り込んだ。
両膝の上に肘をつき、前屈みの態勢でスマホと睨めっこ。

田所さんが何を考えているのか、私にはさっぱり分からない。
憧れてたのは私の方で彼ではなかった筈なのに、どうして逆の立場の人から憧れだ…と言われる羽目になったのだろう。

自分でも知らないうちに目立つ様なことをしていたのだろうか。目立たず、なるべく大人しくしていたつもりだったのに…。


はぁ〜…と重く溜息をついて電源を入れた。
無視しておこうかと思ったけど、その方が居心地が悪いと気づいた。

社交辞令だとしても、とにかく今夜のお礼と無事帰宅したことは知らせておこう。

メールアプリをタップして、トントン…と返信を打つ。気の重い返信メールには、絵文字の一つも入らない。


『帰宅しました。今夜はご馳走さまでした。ありがとうございました。』

料理の味くらい何か打った方がいいかもしれないけど、残念ながら味が分かる程リラックスもしていなかった。

2軒目に行ったBARでもストロベリーフィズを飲んだくらいで、後のことは何も印象にも残っていない。

田所さんは何を喋っていただろうか。
私は、それに何と答えていただろう。