私は、アナタ…になりたいです…。

自宅に着いたのは、22時をとっくに過ぎた頃。
25歳になっても自宅通勤の私は、カギを自分で開けて中へ入った。


「ただいまー」


靴を脱ぎながら声をかけると、奥の部屋から母親の声が聞こえた。


「咲知?おかえり。夕飯、冷蔵庫の中に入ってるわよ」

「今日はいい。外で食べてきた。部屋行くね」

顔も見せずに会話することなんてしょっちゅう。母親はこの時間、撮り貯めたDVDを見るので忙しいんだ。



ゆっくりと階段を上り、すぐ右にある自分の部屋のドアを開ける。
壁際にある電灯のスイッチを入れ、明るくなった部屋の中を見回した。

ドアの正面に腰高窓があり、レースのカーテンが開けた窓の隙間風に揺れている。
左側の壁際には、社会人になってから購入した木のデスク。カントリー調の椅子とセットで、一目見て気に入ってしまったものだ。

デスクの左側の壁に沿うようにベッドを置いている。
母親の趣味で作られた赤い小花柄のパッチワークのカバーを掛け、部屋全体をカントリー調にまとめていた。

右奥にはチェスト。デスクと同じ種類で、どちらも行きつけの雑貨屋さんで購入した。
その左側に置いてある洋服ハンガーに近づいた。

薄手のジャケットを脱いでハンガーに掛け直す。
タバコやお酒のニオイが浸み付いてるような気がして、消臭剤を振りまいた。

しっとり…と濡れたジャケットをハンガーの一番端に掛け、ほっ…と息を吐く。