私は、アナタ…になりたいです…。

「今日からよろしく」と言った後、田所さんはぐいっとビールを一気飲みした。
目の前にある顔を見つめながらオレンジフィズの香りを嗅ぐ。
「どうしてそうなるの…?」という言葉も言い出せずに、私は只々、呆然とするばかりだった………。




田所さんとお別れたのは、午後10時前くらいだった思う。
1軒目のお店で食事をして、2軒目こそ私が払います…と言って、ついて行った後だから。


酔い覚ましに送る…と、駅まで一緒に歩いてくれた。
歩きながらも勿論だったけど、お店でもBARでも、何を話したのかさっぱり記憶にない。
気がつくと駅の前にいて、彼から「おやすみ、また明日」と言われたところだった。


上体を斜めに傾けて見つめる彼に「お、おやすみなさい!」と勢いよく挨拶をして改札をくぐり抜けた。

振り返るのも忘れてホームに着いて、ハッとして後ろを振り向いた。
混雑している駅の構内に、彼の姿を見つけることは出来なかった。

私の身長が他の人達よりも、遥かに低いせいもあったからだけど。


(見送られてたのかな…)と思いながら電車に乗った。
揺られてる車内で、彼の言った言葉を思い出した。



「僕と付き合ってみない?君にしか無いものを教えてあげる」


その場の雰囲気に流されたような言葉にぽかん…としてしまった。
合わせて付け添えられたウインクにまたしても目が眩み、傾けたグラスが鳴るのを夢のような心地で聞いていた。