田所さんは落ち着き払った顔でコーヒーを飲んだ。
私がどれだけ注目されることになるかなんて、彼にはあまり関係なさそうだった。

元から注目されている彼は、暫く女子達から解放されそうだ…と喜んでいた。
逆に私は、どんな仕打ちが待ってるだろう…とヒヤヒヤした。


一気に飲み干したカフェオレのお代わりを注文し、10日ぶりに彼のことをじっくりと眺めた。



「僕には、君のその視線の方が怖いけど…?」


不意に言われて、慌てて下を向いた。
あの夜、これで最後だ…と覚悟を決めていたのに、日増しに募っていく想いを捨てきれずにいる自分をバカだ…と思いながら生活していた。


自分からは、もう一度…とは言えなかった。

劣等感が増すのは、彼のせいだと言ってしまった。

本当は自分に自信が無いだけで、彼がどんな顔をしていたって一緒だったのに。



「ごめんなさい…」と謝った。
彼はコーヒーのカップを皿に置き、「何が?」と聞き返してきた。



「この間の夜…田所さんがコンプレックスの原因だなんて言ってしまって。本当は自分に自信が無いだけで、誰の責任でも無いのに…」