私は、アナタ…になりたいです…。

河佐咲知は、目が合ってすぐに逸らせた。

背中を向けたまま、振り向こうともせずにいる。


その姿に足が止まりそうになる。

周りの女性達にそれを悟られないよう、前だけを見て歩いた。



「ねぇねぇ、田所さん…」


甘えてくる声が煩わしい。
こんなふうに持て囃されたくない気分なのに、振り払うこともできない。

大勢の女性に囲まれるより、たった一人に笑顔を向けられる方がどれだけマシか。


自分が見て欲しいのは、一人の女性だけだ。


一晩経っても、河佐咲知だけだ。


……きっと、数日過ぎても変わらない。


彼女に想いを残したままになる。

母の面影を感じつつも、彼女は母ではない…と、実感しているから。


ーー昨夜、彼女と別れてからずっと、脳裏に焼きついている笑顔があった。

後ろの正面にいる彼女に、あんな笑顔をさせたのは自分だった。


シッカリしてないせいで不安にさせた。

惑わせる様な行動をとったにも関わらず、深入りするのを避けた。


……失いたくない…と思う気持ちを隠した。
誰よりも、大好きな人だったのに。


……亡くなった母の話も初めてした相手だったのに、反論もせず応じたのは失敗だった…。


彼女がこっちの気持ちを推し量って言ってることは百も承知していたのに、その優しさに甘んじた。

彼女には何も返さず、その好意に甘えた。