今日は大晦日
朝、目を覚ますと気分が悪い。

「なんか気持ち悪い…これがつわりなのかな?」

朝食の支度をしてると「うっ…」気持ち悪いトイレに駆け込む。
暫くトイレに入っていると郁斗が声をかける。

「美寿々大丈夫か?」

「うん…」扉をあけてトイレから出る。

「つわりが始まったみたい…」

つわりって結構辛いなぁ…
食事の支度を済ませコーヒーを淹れる。
いつも飲んでいるコーヒーを飲んでも美味しいと思わない。
あぁ…コーヒー飲まない方が良いんだっけ?
なんだか体がだるい。

「郁斗ちょっと横になるね?」

「大丈夫か?」

「病気じゃないから大丈夫」

寝室に行きベットに入る。
すると郁斗もベットに入ってきた。

「郁斗どうしたの?」

「仕事休みだし一緒に居る」

郁斗は私のお腹に手を当て顔を近づけると

「赤ちゃんママをあんまり虐めるなよ?産まれてからいっぱいわがまま言っても良いからな?」と囁く。

郁斗…

「赤ちゃんあなたのパパはいっぱいわがままを聞いてくれるみたいよ楽しみね?」と2人で笑う。

何だか気持ち悪かったのが楽になったみたい。
そのまま郁斗に抱き寄せられながら少し眠った。
目を覚ますと隣には郁斗が居ない。
リビングに行くと郁斗は電話をしていた。

「うん、楽しんで来てよ。ホテルの方にもたっちゃんから連絡して貰ってる。新婚旅行だって言ってあるからさ。それから悪いんだけど…映画の件断ってくれないかな?……あぁ分かってる……うん、そうなんだけど………やっぱり側にいてやりたいんだ………分かった」

電話を切った郁斗はため息をついた。

「郁斗?」

「起きたのか?」

「電話山下さん?仕事?」

「沖縄のチケット山下さんに譲ったんだ。結婚して新婚旅行も行ってないから奥さんと行っておいでよってね。それで奥さんが喜んでるってお礼の電話」

「ねぇ今映画って言ってたよね?仕事?」

「……映画の話があるんだけど、あまりいい条件じゃないから断ったんだ。本業はモデルだしね」

「そうなの?…私の事なら大丈夫だからね?」

「美寿々は心配しないで良いよ、お腹の赤ちゃんの事だけ考えててよ」

「うん…」

夕方になると体調もいいからと郁斗の実家にお邪魔した。

「もう…郁斗嘘つかなくてもいいのに!?」

年末年始は郁斗のお母さんは伯父さんの所に行くと嘘をついた事を聞かされ私は郁人を怒る。

「だってクリスマスイブをお袋と3人で過ごすのに年末年始までってありえないだろ?」

「どうしてよ?家族なんだよ…まだ籍入れてないけど…」

「美寿々ちゃん有難う。郁斗はずっと美寿々ちゃんと二人っきりがいいのよね?」とお母さんが笑う。

「当たり前じゃん」と郁斗が拗ねる。

もう子供みたい…
その時ピンポーン♪とチャイムが鳴る。

「見えたわね?」とお母さんが席を立つ。

誰か来る予定だったのかな?
郁斗を見て首を傾げる「?」と郁斗はにっこり笑う。
するとリビングの扉が開き…

「こんばんは」

現れたのはミチルさんだった。

「ミチルさんどうして?」

「俺が呼んだんだよ」と郁人が言う。

「美寿々ちゃん赤ちゃん出来たんですって?おめでとう良かったわね」

「有難うございます…」

でも…どうして?ミチルさん…

「美寿々、式はまだだけど先に籍だけ入れないか?」

「籍?」

「美寿々ちゃん赤ちゃん出来たんだし、早く私の娘になっても良くないかしら?」とお母さんが言う。

郁斗は婚姻用紙を机に置くと「な!?」と言う。
私が頷くと郁斗は名前を書き続いて私も書く。
保証人欄には郁斗のお母さんに書いてもらう。
そしてもう一人の保証人には…
郁斗はミチルさんへ向き真顔になる。

「ミチルさんハンコ持って来てくれましたよね?保証人をお願いします」と郁斗は頭を下げた。

「本当に良いの?…美寿々ちゃんは私で良いの?」

「はい、お願いします」

お父さんの親友だったミチルさんに私もお願いしたい。

「お母さんは良いんですか?こんな化け物みたいな私でも…」

「あらー郁人の元カノでしょう?郁人の事を吹っ切ってくれる為にも保証人になって下さい」とお母さんは微笑む。

ミチルさんは苦笑すると姿勢を正し自声で
「有難うございます。美寿々ちゃんの父親の寿の代わりに書かせてもらいます」
と言って保証人の欄に杉下辰次郎と名前を書いた。

そして…

「寿に代わってお願いさせて下さい。美寿々ちゃんをどうぞ宜しくお願いします」
と辰次郎さんは頭を下げてくれた。

まるでお父さんが娘を宜しくお願いしますと言うように…
ミチルさん有難う…

郁人は「美寿々」と言って私の左手薬指にマリッジリングをはめてくれた。

「幸せにするよ」と郁斗はリングに口づけをした。

私が初めて好きになった人
私が初めてキスをした人
私が初めて抱かれた人
私が初めて一生愛する人
そしてこの子の父親、私はお腹に右手を当ててこの子と一緒に幸せになろう。

「宜しくお願いします」と微笑む。