どうやら固く瞳を閉じて瞑想していたらしい、寝てるのか?という風な疑惑を含む声色を持って静かに声をかけてくる。
シンプルな家具と参考資料しか置かれていない無機質な部屋にそぐわないふわりと薫る甘いコーヒーの匂いに、ムカムカと肺の中から競り上がる吐瀉感を沸き起こす。
「あ。すみません、気が利かなくて。態々ありがとうございます。あたし明日早出だし頂いたらお暇しますね」
流石にそんな事悟られてはならない、と逃げるように荷物を纏めて一口、二口とカップに口をつけてゆっくりと飲み干す。
早く、いち早くこの場所から去りたかった。
「……いいじゃん。」


