筆舌に尽くし難い。


意識して冷たく言い放ち、扉を開けて出ようとした瞬間の出来事。ドアノブにかけていた手を再度掴まれ、そのまま勢い良くソファーへと投げられ体制を崩す。
がしゃんと盛大に落ちる荷物はそのままで、もたもたしているうちに先輩は覆い被さるようにしてあたしから逃げ道を奪う。
見上げればさらさらと長い黒い髪が顔にかかり、背筋にぞっと鳥肌が走る。

「な、何の冗談…」

「新川が俺をどう思うが正直関係ないよ。
だって君が俺を嫌いでも俺は新川が好きだから」

吐き出された言葉にこれでもかと云った具合に見開き口はぽかんと開いたままでな何も発する事が出来ずにいた。