どうして…こんなこと、するの。

恋人でもないのに…っ。


心臓が口からこんにちはしそうな私に、伊織は更に追い討ちをかける。

「な?絶対来いよ?」

「っ、う…」


こんな風に甘く囁かれては、困る。

抵抗なんて、できなくなってしまう。



…実を言うと、(認めたくはないが)私は大分前から伊織が好きだ。


普段はぶっきらぼうな伊織だけど、素は優しかったりする。


昔、私が伊織のとこの駄菓子屋で買ってもらったあめ玉を落として、食べられなくなってしまった事がある。

そんな時、伊織は手のひらにあめ玉をふたつのせ、

“これ、いっこやる”

そう言って、新しいあめ玉をくれた。


きっと私は、もうその時から、伊織を好きになっていたと思う。