はてさて、一体どうしたことか。



「……ちょっと、」



私、沢井ナナ〈高校二年〉は、現在、幼馴染みの男ーー藤堂伊織(トウドウイオリ)〈同じく高校二年〉に両手首を掴まれた状態で、学校の廊下の壁に押し付けられている。

…いわゆる“壁ドン”の拘束度高めバージョン。


幸い周囲に人はいない。…が。ここは学校である。少女漫画じゃあるまいし、本当やめてほしい。



…それにしても、私は何故こんな状況に置かれているのだろう。

思い当たる節なんて無いのだが。



「おい、」

「な、ななな何でしょう!?」

至近距離には伊織の端正かつ綺麗な顔。恥ずかしすぎて、私は思いきり伊織から顔を背けた。


…頼むからこの距離で喋らないでほしい。