ブラック-SS-




「えっと…その…」



オドオドした姿の彼女に、彼が眉間のシワを寄せる。




「言い訳なら聞かねぇぞ」




当事者じゃない私ですらヒビってしまうほどの彼の鋭い視線に、彼女は全く怖がる事もなく




「どうしてもリンゴジュースが飲みたくて…だけどそこの自動販売機に売ってなかったの」




さっき私の隣でカーテンが閉まっていた先に寝ていたのは彼女なんだと思う。



だけどリンゴジュースが飲みたくて、熱があるのに起き上がったらしい。



そこまでしてリンゴジュースって飲みたくなるものなのか、




「アホか」と言った彼は、彼女の額に手を当てて「やっぱり熱あるじゃねェか」と心配そうに呟く。




彼女は気がついているのだろうか。

彼の心配そうな表情に、




いつもはそっけなくて、冷たくしか言葉を発さない彼が



見たこともないほど優しく話していることに。