ジー・フール




薄暗い部屋には、僕たちパイロットと新堂司令官の姿で圧迫された空気。
消火も終わり、とりあえず機体は滑走路に乗り捨てたまま呼び出された。

はぁ、と重いため息をつく新堂。
それを僕は見つめた。

「見ての通り、格納庫がやられた。このままでは何もできない。改善にも時間がかかる」
新堂は椅子から立ち上がり、後ろを向く。
「…移動する。そう、指示が出た。籠陽爛(コヨウラン)基地と合流することになった。明日早朝にはここを出る」

「ここにはもう戻って来ないのですか?」
右前にいた七城拓魅が質問した。

「今の段階で、ここにいるのは危険だ」
新堂は答える。

「一時避難ですか?」
七城はさらに質問する。

「そういうこととも言える」
新堂は曖昧に答えた。

何故だろう。
何か他に理由があるのだろうか。
でも、この判断は適切だ。
不安定な状況で機体を出撃させるのはかなり危険だ。
機体の故障で事故が起きてみろ?
それこそ不幸だ。
あまりにも死に様が悲しすぎるだろう。
まだ自爆か、戦死の方がマシだ。

愛着がなかったとは言えないが、あるとも言えない。
ただこの環境に慣れていたから、他の基地に移動することは、なんだか気が乗れない。
しかし、いつだってあの男は楽しそうなのだ。
理由はだいたい予想がつく。