ジー・フール


煙が立ち込めている。
灰色だ。
空の上でしか見たことがなかった煙が、地上で舞っている。
鵜嵬基地。

基地の真上を何度も旋回している戦闘機が見える。
その左下に目を移すと、3機が海に着地していた。

旋回しているあの戦闘機はきっと菊永だろうと思いながら、無線を通して話し掛けた。
「菊永」

「何?」

「どういうこと?」

「…悠斗はあの敵機に夢中だったから、気付かなかったと思うけど、あの焼夷弾2段式だったの」

僕は驚いた。
焼夷弾の2段式?

「でもね、2人ほぼ同時に撃ったじゃない?…だから、ちょっとくらいは抑えられたらしいんだけど…」

そう菊永は言ったが、空から見るかぎり大丈夫そうには思えない。

煙が立っているのは、格納庫のようで、本部ではなかった。
しかし、格納庫だったあまりに、何度も爆音が鳴り響き燃え上がる。
本部じゃなかっただけでもまだよかったところだが、これじゃ修理も調整も出来なくなってしまった。

僕は司令官からの連絡を待つことにし、海に向かって降下した。