敵機が旋回した。
僕はそれを目で追う。
一瞬見えた機体には鷹のマークが描かれていた。
僕は鷹の敵機を追い掛けながら何発も撃つ。
しかし思うようにいかない。
それどころか、だんだん差が開いてきてしまった。
無線から聞こえた、菊永の声で我に返った。
「悠斗、悠斗。聞こえる?」
「聞こえてるよ」
僕はあくまで冷静に答えた。
「退避するよ」
「どうして?」
僕は菊永と話している間もずっと、鷹を追い掛けている。
「基地がやられたの」
「やられた?…だってさっき僕たちで焼夷弾を抑えたじゃないか」
僕もついには、感情的になり声を張り上げた。
せっかくの獲物を逃がしてしまうなんて。
僕はそう思いながらも、菊永の指示に従い旋回した。
背中には今までにないくらい、興奮を与えてくれた奴がいる。
だけど今は、こうするしかないように思えた。
敵は最初っから鵜嵬基地が目的だったんだ。
任務が終われば、向こうだってさっさと帰るだろう。
いいように遊ばれたわけだ。
あっちにもマシな人間は何人かいるようだ。
だから、これからのことを期待しよう。
僕はちょっとばかりの無念さと、次へのステージの楽しみを思い描きながら、基地に向かった。



