ジー・フール


「君は本当に信じているのか?」

「何を?」

「昨日のこと」

僕は昨日の出来事を思い出してみた。
車の中。
バー。
揉め事。

「薬品?」

「違う。理由さ。俺たちが何と戦っているのか?」
冬樹は後ろを向いたままこっちを向かない。

「反対派だろ?」

「それだけで戦うと思うか?」
やっと冬樹の顔が見えた。

「じゃ、冬樹は何故戦う?」
前に言われたような言葉を返してみた。

少し沈黙して、冬樹はベットに腰掛ける。
憮然とした表情をしていた。

「僕たちは雇われているんだ。裏切ればおそらく殺されるよ」

「だろうな」
やりきれない様子だった。

それ以上のことを、僕は尋ねなかった。
冬樹も何も言わなかった。
いつもこんな感じで会話が終わる。
でも今日の自分は違った。

「冬樹は何か知っているの?」
興味を持ったのだ。
言いたそうな彼の口を開かせたくなった。

「薬品の研究とやらは表向きで、裏では別の研究をしているんだ」

「それは誰にだってわかる」

「話はここからだ」
今までに見たことのない表情をしている。
威容に圧倒された。