ジー・フール


大人にも好まれるような色彩。
中辛口に仕上げ、ワインやシャンパンの辛口を示す言葉。
彼女にはお似合いだ。

「彼と仲が良いみたいだね」

「彼?あ〜たまに顔出すからね」

「それだけ?」

「何か期待した?」
彼女は聞き返す。

「いや」
僕は軽く微笑み返した。

てっきり僕は、彼女とマスターはできているのだと思った。
それは僕の完全なる誤解らしい。
完全と言えるのも、彼女が彼に注ぐ視線は恋をしている目ではなかったからだ。
しかし、それ以上の関係なら僕の誤解は確信に変わってしまう。
でも僕にはどうでもいい話だ。

「既婚者よ」

何も質問していないのに彼女は答えた。

僕は目を細めて彼の左手に集中する。
何か光るモノが見えた。
指輪だろう。
こういう時、僕の目の良さが役に立つ。

「好きだったの?」

「……」

僕はまずいことを言ってしまったかと思って、撤回しようとした。

「あっいや」

「いいのよ」
彼女はグラスを下ろして呟いた。

「ごめんなさい」

「謝らないで」

彼女は大人だ。
僕は思った。