2本煙草を吸い終わって、部屋に戻ろうとした。
「お帰り?」
後ろから女の声が聞こえた。
「誰?」
僕は言いながら振り返る。
「ツバキ、よろしく」
軽く手を伸ばす。
僕はこの女性に見覚えが全くなかった。
はじめてみる顔。
「何か用?」
「用はないわ。ただそこにいたから声かけただけ」
「逆ナンってやつ?」
「面白いわね」
彼女は手で口元を隠しながら笑った。
上品な女性だろうと僕は思った。
「なら帰る」
僕は体を戻してエレベータに向かって歩いた。
「待って」
僕は再び振り返った。
彼女はその場から動いていなかった。
黒いスーツ姿のツバキと名乗る女。
どうも逆ナンするタイプには見えない。
「何?」
「どうせ貴方も暇でしょ?」
腕を組みながら僕の方にゆっくり歩いてくる。
僕は一息ついて言った。
「暇なら?」
「今からどう?」
「やっぱり逆ナンじゃないか」
「どっちでもいいわ」
確かに僕にとってもどっちでもいい話だった。
きっと会話になる種を探していたのだ。
僕はそのまま彼女の後ろについていき、ホテルを出た。



