ジー・フール


寝付けなかった僕は、部屋から出た。
エレベータで1階まで降り、ロビーのソファーに深く腰掛ける。
時刻は夜中の2時を回ったところ。
人の数は減ったがまだ明るい。
酔って受付の女性に迷惑をかけている男もいる。
まだ明けてもいなければ、夜もとっくに終わっている。

それでも人間は人生の半分を睡眠に費やしてる。
それはある意味勿体ない。
だから、あの男も勿体ない時間を有効に使っていることは、生きている証とも言える。
寝ている間は生きている証拠を生み出せない。
寝返り?
寝言?
鼾?
それ以外の何か?

僕はあの男のやっていることは、いい生き方だと思える。
しかしながら、他人に迷惑をかけてはならない。
僕がもし受付の女性だったら、迷わず殺しているだろう。
それじゃ、あの男の人生があまりにもくだらな過ぎる。
でもこの世に、もしなど有り得ない。
起きている出来事に、もしなど存在しない。
その言葉は自分を助ける為に使うか、幸福にするモノか、落胆させるモノか、自分を満たす為に使う。

なんてこの世の全ては、くだらないのか。
言葉は何故あるのだろう。