冬樹みたいないつもは黙っているのに、さり気なく狙い射つところがかっこいいのだろう。
それに比べて女性に合わせ、テンションの高さをずっと保っている倉田はかっこよくてはならない。
それがきっと普通で基準になってしまっているからだ。
「悠斗」
倉田に声をかけられ、椅子から降りて僕はスローイングラインに立った。
バレルを持ちボードに矢先を向ける。
タングステン製で重さはだいたい18〜20グラムあたりだろう。
ボードの中心点は床から173センチ。
僕より高い。
ボードまでの距離は237センチ。
それなら、これくらいの力なら必ず的を獲られる。
確信があった。
だって僕はパイロットだからだ。
距離感、風力、重量。
経験と感覚と勘で出来ている僕の右手は、綺麗に真っ直ぐ中心を撃った。
2本とも一気に放った。
その時、僕の耳はボードに刺さった矢先の音だけが聞こえている。
周りの雑音は一切入ってくるのを許さなかった。
最後の1本を手から放した時、隣の隣でグラスの割れた音が僕を邪魔した。
案の定正確さを右手は失ってしまった。
Bull。



