ジー・フール


菊永の部屋とは全然違うのかという言葉だった。

「とりあえず…」
倉田が菊永の質問に答えていた。
「あの女性群と一緒に6人でどっか遊びにいこうか?」
その発言はなんだか言う前からわかっていたように思える。
菊永も冬樹もたぶん同じだ。

「じゃ、30分後に下のロビーで」
彼女はそう言うと自分の部屋に戻って行った。

僕はしばらくベットに座った。

「悠斗」
倉田は僕の横に座った。
「どっちがタイプ?」

「は?」
僕は見ていなくても、視界で倉田がにやけているのがわかる。

「俺は〜ワンピースの女」
聞いてもいないのにひとりで話しはじめた。
見てればわかる。

「冬樹はどっち?」
倉田は冬樹のいるバルコニーに顔を向けて聞いている。

ゆっくり冬樹はバルコニーから出てきた。
「ショート」
一言ボソッと答えた。
僕はこの時はじめて冬樹の声を聞いた。
低い声だが、まだ幼さが残っている。
僕らの前を通り過ぎて冬樹はトイレに行ってしまった。

僕は彼が立っていたバルコニーに目を向けた。
ただずっとなんとなく見ていた。
この時倉田はあの女性について熱烈に語っていたかもしれないが、全く耳に入ってこなかった。
それよりも、風の吹く音がすごく聞こえた。