ジー・フール


菊永の話によると、2部屋取れたがその各部屋にベットが2つずつしかない。
だから倉田は別に男3人で、菊永1人で部屋を分ければいいと言ったのに対し、菊永は悠斗と同じ部屋にするから大丈夫と言って口論になったらしい。

僕の意見も冬樹の意見も聞いちゃいない。
でも、僕にとってはどっちでも構わないことだった。
菊永も何故、僕と一緒と言ったのだろう。
せっかく部屋を1人で使えるというのに、わざわざ狭くするなんて。

僕は持っていた煙草を、テーブルにある灰皿に押しつけた。
顔を上げると、隣のテーブルで座っていた女性2人が立ち上がり、こっちに向かって歩いてくる。

「すみません」
左にいたピンクのワンピースの女性が話し掛けてきた。

それに対応して菊永が振り向く。
「はい?」

右にいる女性はジャケットを羽織っていて、ジーンズが足の細さを教えてくれているようだった。
茶色のショート髪を耳に掛ける。
ピアスが2つ見えた。
左の女性よりも細長い眉でずっと腕を組んでいる。
僕の視線に気付いたのか、一瞬目が合った。
僕はすぐに目を逸らした。