ジー・フール


街が近くなった。
入るまでにも時間がかかる。
警備員にパイロットカードを見せて、檻の中に入っていく。
鉄檻を車が走りそのまま進んでいくと、そこには普通に街が広がっていた。
おかしいところはこの入り口だけで、あとは変わらぬ光景。
道路もあれば、車も走りバイクもトラックも。
大きなデパートも家もある。
今まで起きていた外の悲劇など、知らないみたいに彼らはここで暮らしているのだ。
街に来たのは2回目だった。
1回目は昔のこと。
上野に連れられて来たことがある。
その時よりも街は盛えていた。

僕たちが乗るワゴン車は、街の車に混じり道路を走った。

「まず朝食だな」
倉田は運転しながら、僕たちに話し掛ける。

「そうね」
菊永の声が後ろから聞こえた。

「何食べたい?」
再び倉田が聞く。

「朝だからがっつり系は嫌ね」

腕時計を見ると、9時前だった。

「まだ朝早いから、店もあまりやってないんじゃないかな?」
僕は腕時計を見ながら言った。

「うーん。とりあえず走ってれば見つかるだろう」
そう言って倉田は少し笑った。