ジー・フール


長い時間揺られていた。
3、4時間だろうか。
暗闇からやっと抜け出して、街が見えはじめた。
それでもまだ小さい。
この間倉田はずっと喋っていた。
目を閉じても、耳までは閉じられない。
後ろの2人も同じだろう。
でも誰も倉田を止める者はいなかった。
何故かはなんとなくわかる。
もうしばらく車に揺られながら、僕は変わった風景を眺めていた。
周りはこんなに変わったのに、空は全く変わっていない。
やっぱりいくら違う場所に来ても、この世界からは逃げられないのだ。

僕は新鮮な空気を吸いたくて、窓を開けた。
そこから入ってくる風は、油臭さも独特な匂いもなかった。
僕はこの時、ちょっとだけ笑ってしまった。
でもきっとみんなには気付かれていない。
そこには僕だけの時間が流れていた。
何度も深呼吸しては、空を見つめた。
今日は地上から空を感じた。
解放感か。
なんだろう。
ただ言えたのは、倉田に感謝の気持ちがあったこと。
その迷惑さが僕には必要なことだった。
今回が特別僕が思っただけで、これから先ただの迷惑だとしても、僕は付き合おうと思えた。