ジー・フール


冬樹龍彦という男を一言で表せば、孤高な男。
だから僕と少し似ているところがある。
倉田よりは気が合いそうに思ったが、僕には似合わない。
冬樹もそうだろう。
僕が彼を知ったのは、司令官室である。
休暇の話をパイロット全員を呼んで、あの狭い部屋で話したのだ。
今生存しているパイロットは僕も含め、5人。
今日不参加者がひとりいる。
名前は忘れた。
風邪を拗らせたらしい。
それが本当かはわからないが、僕にはどうでもいい話。
この案を提案した、というより勝手に進行してしまった倉田は、僕と違って人当たりがいい。
だからきっと前から冬樹の存在も、もうひとりのパイロットのことも知っていただろう。

僕の耳からあのメロディが流れなくなった頃、ちょうど運転席の窓にあのバーが通りすぎた。
この場所だけは道路が広がっている。
でもすぐにまた細い一本道を車が走る。
森の中をひたすら白い石ころの上を真っ直ぐ進む。
早朝だからではなく、森の中は1日中薄暗い。
熊でも出てきそうだ。
たまに入ってくる上からの光が眩しく感じる。