ジー・フール


「なんとなく、そんな感じがしたから」
彼女は下を向いて答えた。

「適当」
僕は苦笑いで言った。

「別にいいでしょ?見た目的判断で!だから敬語禁止」
彼女は僕を指差して忠告した。
「そんで、私の名前」

「あ〜」
僕は半分忘れていた。
今まで普通に問題なくやってこれたから、気にすらしていなかった。

彼女は立ち上がり僕の前に来た。
「菊永渚」
そっと手を差し伸べた。
「これからよろしく」

握手をしたのは久しぶりだった。
人の体温。
僕の体温が彼女に伝わる。
ここにきてはじめてパートナーじゃないパイロットと言葉を交わした。
そして名前も。

「よろしく」

今日はじめて逢ったのに、昔何処かで逢っていたような気がした。
ニコッとした表情。
僕もそれに合わせるように愛想笑いした。
今までにない完璧な笑顔だったと思う。