ジー・フール




倉田に呼ばれて屋上に来た。
夜8時でも、まだ真っ暗とは言えないくらい多少明るい。

倉田は片手で缶ビールを2本持って、僕に笑いかけた。

「よっ」
そういうと缶ビールを僕に投げた。

「俺のおごりだ。飲め」

どういうつもりなのかわからなかったが、僕は缶ビールを開けた。

「明日…来るみたいだな」

「女性パイロット」

「そう。女だぞ?びっくりだよな?」

「別に」

倉田はため息を吐いて、缶ビールをがぶ飲みする。

「お前。ホントつまらないよな」
飲みながら呟いた。
「なんか…足りない…お前」
缶ビールで僕を指差す。

もうだいぶ酔っているのだろう。
僕が来る前に何本かすでに飲んでいる。
足元に空き缶が4本並べてあった。
彼はあれで5本目だ。

「酔ってますね?」
僕は何となく言ってみた。

「いや…全然」
倉田はまた僕に微笑んで言う。
「女だもんな〜俺より腕のいい奴だったらどうしよ…」

いつにもなく弱気だ。

「でも、倉田さんだって認められてこっちに配属になったんじゃないんですか?」
僕は慰めの言葉をかけた。