ジー・フール


僕たちはそこから少し歩いて木陰に入る。
木にもたれながら座った新堂。
僕はその横で立ったまま、煙草を吸った。

「すっかり晴れたな」
新堂は呟くように言う。

僕は空を見上げて少したってから、そうですね、と言った。

「明日パイロット1人来る」

「そうですか」

きっと新堂は、昨日の僕の発言を気にして言ってくれたのだろう。

「どんな人ですか?」
僕はこの流れを崩してはならないと思い、適当に尋ねてみた。

「優秀な女性パイロットだよ」
新堂は微笑んで答えた。

「女性ですか。珍しいですね」

「まぁこの仕事は技術力、判断力他もろもろ。外見や性別は一切関係ない…」

「えぇ」
僕は頷く。

それから沈黙が続き、新堂も僕も会話を求めなかった。
煙草を吸って、その煙をただジーッと見る。
その繰り返し。
でも僕はそれが苦だとは全く思わない。
それよりも人に気を遣って会話をしている方が、僕にとって苦である。
人の顔色を伺って、何か得することはあるのだろうか。

新堂は立ち上がると、何処かへ行ってしまった。
僕は少しその背中を目で追ったが、すぐに止めて空を見上げた。